企業の枠を越えたホンモノ社会人「インタープレナー」のワークスタイルとは?

企業の枠を越えたホンモノ社会人「インタープレナー」のワークスタイルとは?
目次

まだ流行っていない、でもこれから必ず流行る!「インタープレナー」というキーワードをご存知ですか?

次世代をリードするワタシゴト読者には、ぜひ知っていただきたいワークスタイル。
インタプレナーのコミュニティを運営し、「100個の新産業を共創する」「新産業のエコシステムビルダー」SUNDREDの留目真伸さんに、その真髄を聞きました!


企業の枠組みを越え社会起点で考える!インタープレナーってなんだ?

●インタープレナーとは、どんな人のことですか?


インタープレナーという言葉自体は、「失敗の本質」の共著者でもある寺本義也先生が、1995年に提唱しました。2019年頃から、私たちがリブートして使い始めています。

「アントレプレナー」は起業家、事業をつくる人のこと。そこから、企業内でビジネスを立ち上げる社内起業家を「イントレプレナー」と言ったりします。インタープレナーは、よく「越境人材」などと説明されます。組織に所属しながらも、その枠を越えて活躍する人のことです。

ただ、私たちはインタープレナーの概念に、21世紀型の社会人としての、もう少し深い意味を託しています。

20世紀は、不足するモノを満たしていく時代でした。足りないモノ、すなわち社会の課題が明確で、お金を集めて効率よく生産する、企業の仕組みが適していました。

私自身、グローバルなパソコンメーカーの経営者として、「一人一台」の世界を目指し企業で仕事をしてきました。そして、ある程度モノは行き渡り、大量生産は行き着くところまで来たように感じています。

パソコンに限ったことではなく、現代ではモノは手に入るようになりました。しかし、それでも人間は満足していません。人間には想像力があり、もっと良い社会、あるべき未来をイメージするからです。そして、現状と未来像のギャップを不満や課題ととらえ、その解消が新たな価値創造の目的となります。



肝心なのは、「より良い未来」のイメージも、そこに至る課題と目的も、個人や個々のコミュニティによって少しずつ違うということ。人は元々多様な生き物なのでしょう。モノへの欲求はそれを隠すほど強かったのですが、満たされてしまうと、本来の多様性が目に見えるようになります。


課題が明確でシンプルにその答えとなる製品やサービスを効率よく提供していく時代の企業の仕組みは、この変化に対応できません。新たな価値創造の仕組みが必要であり、それを担う人材がインタープレナーなのです。


私たちはインタープレナーを「組織の壁を越えて対話し、新しい目的やそれを実現するためのエコシステム仮説の共創を行い、それぞれが動かせるアセットを動かしながらその実現に取り組んでいく社会人」と定義しています。


●色々な組織に参加する、という意味での「越境」ではなく、起点はあくまで社会。一企業の単位で解決できない社会の課題を考えるのがインタープレナーなのですね。「それぞれが動かせるアセット」とは?


自分の専門性やネットワーク、場合によっては所属する組織の力のことです。

SUNDREDのインタープレナーコミュニティには、企業の社員、起業家や経営者、大学の教職員、自治体の職員、医者などのプロフェッショナルなど、実にさまざまな人が参加します。

そこで生まれたプロジェクトが、自分の会社や研究機関のためにもなるならば、組織のリソースを使うこともあるのです。


●それはおもしろい! 組織を巻き込めれば、個人の集まりより、はるかにダイナミックな活動ができます。複業とも、副業とも違うまったく新しいワークスタイルです!


これからの人材は課題を見出す力が必要になる!

●ワークスタイルで考えると、解決するべき課題と目的から設定する、というのは重要なポイントですね。会社のミッションやビジョンは決まっていたり、上から降りてくるものです。
それらを実現する方法を考えることはあっても、そもそも何のために事業を行うのか、という意思決定に関与する機会はあまりありません。

そのとおりです。

何が満たされていないのか、なぜもっと社会を変える必要があるのか、どんな社会にしていくのか、共通の答えというものはなくなりました。だからこそ、解決するべき課題は、対話しながら考えていかなければなりません。

もはや、課題を与えられることはなくなり、目的そのものを作り上げていく時代になります。

SUNDREDのインタープレナーコミュニティからは、さまざまなプロジェクトが目的から共創されています。「漁業のあるべき姿」を考えて、資源を浪費せずおいしい魚をつくる陸上養殖産業のトリガーとなる会社をつくってしまったり、「林業の未来」を考えて、人が関わるほど豊かになる森づくりの実証実験を行ったり。

それぞれ漁業や林業だけでなく、研究者やWeb3、マーケティングの専門家、料理人まで、多様なバックボーンを持つ人材が対話して、プロジェクトを進めています。

●なるほど、企業とは違った単位で事業を考えるのが、インタープレナー的ですね。そうはいっても、それぞれの企業も必死に社会の課題を解決しようと取り組んでいるはずです。インタープレナーが、企業の枠組みを超えなければならない理由は何でしょうか?


個々の会社が提供する製品・サービスだけで実現できる課題解決よりも、つながったソリューションによって行う未来社会の共創が求められるようになっているからです。

AIやIoTにより、活用できるデータが爆発的に増えました。それは、ひとつの企業だけが活用するものではなくなっています。

例えば、私はパソコンメーカーの新規事業として、タブレットやウェアラブル端末をつくっていました。どんなに優れたハードウェアも、全体から見ればただの部品、センシングやインプット/アウトプットのデバイスでしかありません。

デバイスを介して集まるユーザーの行動や嗜好など、ぼう大なデータを研究機関と一緒に解釈し、アプリケーションに反映させて、デジタルとリアルのソリューションを提供し、またハードウェアやそれぞれの製品・サービスを改良していく。大きなサイクルを回さなければ意味はありません。

そんなサイクルを、ひとつの企業が回すことが現代の最適解ではない、と私は考えています。

データを共有し、各社、各人が提供できるソリューションをつなげ、データにさまざまな意味合いを持たせて活用していく。そうすれば、ひとつの製品、サービスだけで解決できないことを、解決できるようになっていきます。

そんななかでは、企業も今までのやり方では成長できません。どんな天才的な経営者も、自分あるいは自社の立場だけで、一方的に課題を定義できる時代ではないのです。

これはインフルエンサー・マーケティングの構造によく似ています。自社の商品をより魅力的に伝えるにはどうすればよいか、価値観の違う集団にどうアプローチするか、企業には対応できないので、それぞれのコミュニティに的確に働きかけていく力を持つインフルエンサーが起用されました。

同じように、これからは社会との対話や目的づくりをリードしていくインタープレナーとのエンゲージメントを、企業がより一層必要としていくでしょう。


●なるほど!企業の課題ではなく、社会の課題を定義して解決できる人材が、企業にも求められる。そのことで、会社のために働くというより、社会のために会社のリソースを使うような働き方ができますね。


これまでは、企業が定義した組織を効率よく回したり、社内で決まった上下関係の中でだけうまくコミュニケーションをとれる人が、評価されてきました。これからはそうではなく、多様な人たちと共創してビジョンをつくったり、その中で企業がやるべきことを定義できる人が活躍します。


インタープレナーになる方法とは?

●インタープレナーが新しい働き方であると同時に、これから求められる人材だということがよくわかりました。では、ワタシゴトの読者がインタープレナーになるには、どうすればよいですか?


インタープレナーは、誰でもなれます。レベル感の違いはありますが、やろうと思えばすぐにインタープレナーとしての活動ができるのです。

行動としては、会社の中で自分の業務だけこなすのではなく、まずは組織を少し飛び出して、さまざまなモノの見方、考え方をする人に触れてみることです。他業界の集まりなどに参加して知見を広げたり、興味のある分野を研究したり。身近なところで、地域のコミュニティに参加するのもよいでしょう。

例えば、地域のお祭にも歴史があり、その対極に未来があります。お祭りにはどんな伝統があり、未来はどうあるべきで、そのなかで現代の自分たちに求められている課題、目的は何なのか。地域の人たちと対話するだけでも、立派なインタープレナーの活動になります。

私自身、グローバル企業に勤め、海外に住んだ経験もあるので、さまざまな人種や国籍の人と接してきましたが、いわゆるIT業界内にいると、できるつながりは意外と同質的です。それよりも、今日本の地方で長く暮らしてきた方や、若いお母さんのような自分と違う立場の人と話す方が、新しい発見をすることがはるかに多く、多様性を感じます。

国境を超える横の広がりだけでなく、年齢や立場といった縦の深さも大事。
身近にあるコミュニティでも、入ってみると、多様な社会の単位における課題を見出す練習になります。



新提案:インタープレナーの情報収集3カ条

会社に縛られることなく、社会のために自分を活かし、そのために会社のリソースまで使ってしまうインタープレナーという生き方。なかなか刺激的なワークスタイルではないでしょうか?

完全無欠なインタープレナーではなくても、インタープレナー的なエッセンスを仕事や私生活に取り入れることで、より自分らしく生きられるはずです。

インタビューの中でも登場したとおり、留目さんのSUNDREDは、インタープレナーのコミュニティを運営し、さまざまなセミナーやワークショップを開催しています。

筆者も参加した経験がありますが、出会う人々の熱量の高さ、視野の広さに、大いに刺激を受けました。誰でも無料で参加できるので、体験してみることをおすすめします。

また、留目さんのいう身近なコミュニティは、地域の集まりのほかにも、趣味の習い事やボランティア、あるいはオンラインサロンなど、たくさんあります。職業上のスキルを活かせる「プロボノ」は、特にインタープレナーに近い活動ができるのではないでしょうか。

ただ、見知らぬコミュニティに参加するのは、ちょっとハードルが高いし、自分に合ったものがすぐ見つかるとも限らない…。


すぐできることからはじめたい方は、今日の朝刊を読んではいかがでしょうか? 新聞には自分の業務や関心に関係なく、グローバルから家庭まで、さまざまな社会の単位の出来事が描かれています。解決策としてのテクノロジーやビジネスモデル、その根本にあるサイエンス(自然科学、人文科学)の知識も得られます。

社会に関心を持つことが、インタープレナーの第一歩。そのために、新聞はとても良いツールなのです。

ただ読むだけではなく、インタープレナーのコンピテンシーを意識しましょう。特に以下の3点が役立ちます。

  • 社会起点…社会課題や社会のあるべき姿に関心を持ち、それを起点に企業や個人が何をするべきか考える

  • 共感する力…他者の意見やその背景にある考え方から、興味ある部分、面白いと思う部分、共感する部分を特定する

  • エコシステム構想力…自社・自己・他社・他者のリソースを組み合わせ、目的の実現、課題の解決のためのエコシステムを構想する


ニュースの裏にある課題はなにか? 活用できる自分自身や自社のリソース、専門性は何か? さらにどんな人や企業とつながると課題解決できるか? シミュレーションしてみるだけでもおもしろそうです。

企業の中だけで動くのは「会社人」。インタープレナーのエッセンスを取り入れて、本当の意味での「社会人」に脱皮しましょう!

 

小越建典
記事を書いた人
小越建典

課題解決クリエイター 広告代理店の営業マンを経て、2007年にライターに転身。書籍や雑誌、Webメディアの企画・執筆を担当。2014年ごろからはオウンドメディアの企画・運用に携わり、販売促進や広報・PR、ブランディングなど、コンテンツで企業の課題を解決する提案を得意とする。 メディア執筆、書籍の実績も多数。近著に「4コマで日本史(山川出版社)」。自社にてニュースレター「ソルバ!イノベDB」を運営。